ゴールデンサークルで自分の「なぜ」を見つける。Why・How・Whatの書き方と穴埋めテンプレ
ゴールデンサークルは、Why(なぜ)・How(どうやって)・What(何を)の3つの円で考えを整理する枠組みです。サイモン・シネックが2009年のTEDx講演で示した由来、個人の自己分析に使うときの書き方、そのまま使える質問リストと穴埋めテンプレート、脳のしくみによる説明への批判まで解説します。
ゴールデンサークルとは
ゴールデンサークルは、Why(なぜやるのか)・How(どうやるのか)・What(何をやるのか)を、内側から順に3重の円で描く枠組みです。アメリカの著述家サイモン・シネックが、2009年9月のTEDx講演「How Great Leaders Inspire Action(優れたリーダーはどうやって行動を促すのか)」と、同じ2009年の著書『Start With Why』(邦訳『WHYから始めよ!』)で示しました。もとは組織やリーダーが人を動かす伝え方の話ですが、自己分析では「自分は何に動かされて、いまの行動を選んでいるのか」を言葉にする道具として使えます。
所要時間と道具
30分〜1時間。紙1枚とペンがあれば足ります。紙の中央に小さな円、その外にひと回り大きな円、さらに外に大きな円を描き、内側から「Why」「How」「What」と書いておきます。円を描くのが面倒なら、3行の箇条書きでも同じ働きをします。
ひとりで掘るのが難しければ、友人や同僚に自分のWhatを見せて「なんでこれをやってると思う?」と聞いてもらうと、手順3の代わりになります。人から見た自分を集める方法は他己分析にまとめています。原典の講演はTEDの公式サイトで無料公開されています(約18分)。書籍は有料ですが、3つの円の考え方は講演だけでつかめます。
向いている人・場面
- 志望動機や転職理由で「なぜそれをやりたいの?」と聞かれると、言葉に詰まる人
- やっていること(What)は説明できるのに、そこに気持ちが乗っていない感じがする人
- 仕事を変えても続けたい「芯」のようなものが自分にあるか、確かめたい人
Whatは書けるのにWhyが出てこないのは、思い出す材料が足りないことが多いです。材料が少ないと感じたら、先にモチベーショングラフや自分史で、気持ちが動いた場面を集めておくと掘りやすくなります。大切にしたい言葉をリストから選ぶほうが早い人には、価値観ワークが向いています。
やり方ステップ
個人で使うときのコツは、書く順番を原典と逆にすることです。シネックの講演は「伝えるときはWhyから話す」という話ですが、自分のWhyはいきなりは書けません。外側のWhatから書き始めて、内側へ掘っていきます。
まず、この質問に答えて3つの円を埋める
コピーして使える質問リストです。外側のWhatから順に答えます。
| 円 | 書き出すための質問 |
|---|---|
| What(何を) | いま時間を使ってやっていることは? 仕事・学業・趣味・頼まれごとから3〜5個。 |
| How(どうやって) | それをやるとき、気づくとそうしているやり方は? 人から「あなたらしい」と言われるやり方は? |
| Why(なぜ) | そのやり方を選んでしまうのは、何を大切にしているから? どうなったら「やってよかった」と思える? |
外から内へ掘る手順
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Whatを書き出します(10分)。外側の円に、いまやっていることを書きます。「営業」より「新人の同行をよく頼まれる」のように、場面が浮かぶ書き方にします。
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それぞれのHowを書きます(10分)。同じ仕事でも、やり方は人によって違います。「説明を図にしてしまう」「相手の話を最後まで聞く」のように、気づくとそうしているやり方を真ん中の円に書きます。
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Howに「なぜ?」を3回ぶつけます(15分)。「なぜ図にするのか」→「相手がすぐ分かるように」→「なぜ分かってほしいのか」→「分からないまま置いていかれる人を見るのがつらいから」。3回目あたりで、仕事の種類を変えても残りそうな理由が出てきます。それを中央の円に書きます。
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Whyを1文にまとめます(10分)。共著『Find Your Why』が使う「(自分がすること)ことで、(その結果)になるように」という形を日本語にした、次の穴埋めが使えます。
私は、(自分がすること)ことで、(誰)が(どうなる)ようにしたい。
記入例はこうなります。
私は、むずかしいことを分かる言葉に置き換えることで、置いていかれそうな人が自分の足で前に進めるようにしたい。
-
Whyから順に声に出して話してみます(5分)。最後は原典の使い方どおり、内側から外側へ話します。「置いていかれる人をなくしたいんです(Why)。だから、むずかしい話を図や例に置き換えるのが得意です(How)。いまは新人教育を任されることが多いです(What)」。この順で話せると、自己紹介や志望動機が「やっていることの説明」から「その人らしさの説明」に変わります。
時間がないときの5分版
全部やる時間がなければ、手順3だけで十分です。最近うまくいった仕事や活動を1つ選び、「なぜそうした?」を3回だけ自分に聞いて、最後の答えをメモに残してください。
気をつけたいこと
- 脳のしくみによる説明は、単純化しすぎだと批判されています。シネックは講演と著書で、WhyとHowを感情や意思決定に関わる脳の部分(大脳辺縁系)に、Whatを言葉や理屈に関わる部分(新皮質)に重ねて、生物学に根ざした考えだと説明しました。しかし神経科学の側からは、感情による判断と理屈による判断が脳の別々の場所にきれいに分かれているという見方は古く、実際の脳ははるかに複雑だという指摘が出ています。この記事では、ゴールデンサークルを脳科学の理論ではなく、考えを整理するための図として紹介しています。
- 原典の講演と著書は、組織やリーダーの話が中心です。個人向けの『Find Your Why』も実践のための手引きで、効果が研究で確かめられた手法ではありません。この記事の掘り方の手順も、自己分析向けに組み立てた使い方のひとつです。
- 「なぜ?」を重ねすぎると、どんな答えも「人の役に立ちたい」「幸せになりたい」のような、誰にでも当てはまる言葉に行き着きます。そこまで行ったら1段階戻り、自分の場面が浮かぶ言葉のところで止めてください。
- Whyが見つかっても、いまの仕事を変えなければならないわけではありません。WhyとWhatがずれていると分かったときも、まずはHow(やり方)で寄せられないかを考えるほうが、現実的な一手になります。
やった後の次の一歩
Whyの1文ができたら、次の2週間、気持ちが動いた場面とやる気が出なかった場面を短く書き残して、その1文に当てはまるかを見てください。当てはまる記録が続けば、それは借り物ではない自分のWhyです。外れる記録が続くなら、1文の言葉を直す合図です。見つけたWhyを、これからの行動の基準として1文にまとめたくなったらミッションステートメント、Whyを満たせる仕事の条件を整理したくなったらWill-Can-Mustが隣にあります。どの手法を選んでも、結果を日々に活かすのは「書いて、読み返すこと」です。
よくある質問
- ゴールデンサークルは会社やリーダー向けの考え方ではないのですか?
- もともとは、組織やリーダーが人を動かす伝え方の枠組みとして紹介されました。ただ、シネック自身ものちに共著『Find Your Why』(2017年)で、個人やチームが自分のWhyを見つけるための手引きを出しています。この記事では、その個人向けの使い方に絞って紹介しています。
- Whyが立派な言葉になりません。
- 立派である必要はありません。「目の前の人が困ったままでいるのが落ち着かない」のような少し不格好な言葉のほうが本音に近く、日々の判断に使えます。Whyは誰かに見せる標語ではなく、自分が何に動かされてきたかの説明です。
- ミッションステートメントとの違いは何ですか?
- ゴールデンサークルは「なぜそれをしているのか」という理由を掘り当てる道具で、ミッションステートメントは、見つけた理由も含めてこれからの行動の基準を1文にまとめる道具です。ゴールデンサークルでWhyを掘り、その言葉をミッションステートメントの材料に使うと、無理なくつながります。
2026年10月6日 更新
どの手法を選んでも、結果を日々に活かすのは「書いて、読み返すこと」です。