キャリアデザインシートの書き方。これまで・これから・次の一歩を1枚にまとめる手順と記入例

キャリアデザインシートは、これまでの経験と大切にしてきたこと、これからありたい姿、次の節目までの一歩を1枚に書き出すシートです。「節目にはしっかり考え、節目の間は流れも生かす」というキャリア・デザインの考え方、国の様式「ジョブ・カード」との関係、そのまま使えるシートと記入例、書くときの限界まで解説します。

わかること これから 所要時間 45分〜
向いている場面: 転職就活復職副業日常
4コマでわかるキャリアデザインシートの書き方。これまで・これから・次の一歩を1枚にまとめる手順と記入例

キャリアデザインシートとは

キャリアデザインシートは、これまでの経験と大切にしてきたこと、これからありたい姿、次の節目までの一歩を、1枚に書き出して整理するシートです。特定の考案者がいる手法ではなく、会社の研修や大学のキャリア支援などで、それぞれ形の違うシートが使われています。土台にある「キャリア・デザイン」という考え方は、経営学者の金井壽宏さんの『働くひとのためのキャリア・デザイン』(PHP新書)で広く知られるようになりました。入社・昇進・転職のような節目にはしっかり立ち止まって方向を考え、節目と節目の間はある程度流れに任せて偶然も生かす、という考え方です。

所要時間と道具

45分〜1時間。紙とペン、またはメモアプリがあれば足ります。下の「やり方ステップ」にあるシートをそのまま写して使えます。

国が様式を定めているものとして、厚生労働省の「ジョブ・カード」があります。その中の様式1「キャリア・プランシート」は、これまでの経験や得意なこと、これからやってみたい仕事や働き方を書く様式で、就職活動やキャリアコンサルティング(国家資格をもつ相談員との面談)で使われています。ウェブサイト「マイジョブ・カード」から、オンラインで作成・保存もできます。この記事のシートは、それよりも項目を絞り、ひとりで1時間以内に書き切れる形にしたものです。

向いている人・場面

  • 転職・就活を考えはじめ、何を軸に選べばいいかを、一度まとめて書き出しておきたい人
  • 休職や育休からの復職を前に、戻ってからどんな働き方をしたいかを整理しておきたい人。シートを手元に置いておくと、上司との面談で話す材料にもなります
  • 副業を始める前に、本業と副業それぞれで何を満たしたいのかを分けて考えたい人
  • 異動・昇進・年度替わりなど、日常の中の節目で、これからの方向を確かめ直したい人
  • ほかの自己分析で集めた材料(強み・価値観・過去の出来事)を、1枚にまとめて使える形にしたい人

やり方ステップ

シートは「いまの節目」「これまで」「これから」「次の一歩」の4つの欄でできています。上から順に埋めていきます。

キャリアデザインシート(コピーして使えます)

【0. いまの節目】
・いま、どんな節目にいるか:
・この節目で、決めたいこと・考えたいこと:

【1. これまで】
・やってきたこと(仕事・学び・活動を3〜5個):
・得意なこと・人からよく頼まれること:
・大切にしてきたこと(選ぶときに譲らなかったこと):
・いちばん手ごたえがあった場面:

【2. これから】
・どんな状態で働いていたいか(ありたい姿):
・3年後、どうなっていたいか:
・1年後、どうなっていたいか:

【3. 次の一歩】
・ありたい姿と、いまの自分の差:
・次の節目までに、試すこと(1〜2個):
・最初の一歩(今週やること):

4つの手順

  1. いまの節目を書きます(5分)。「転職を考えはじめた」「来月から職場に戻る」「副業の誘いがあった」のように、いま自分がどんな節目にいるのかと、この1枚で何を決めたいのかを書きます。ここがはっきりすると、ほかの欄で何を書けばいいかが絞れます。

  2. これまでを書きます(20分)。やってきたこと、得意なこと、大切にしてきたこと、手ごたえがあった場面を書き出します。肩書きや実績の大きさではなく、「自分で選んだ」「時間を忘れた」と感じた場面を拾うのがコツです。思い出しにくいときは、過去の出来事を時系列で並べるモチベーショングラフや自分史の結果を書き写してもかまいません。

  3. これからを書きます(15分)。最初に、職種や役職ではなくどんな状態で働いていたいかを1文で書きます。次に、それに近づいた3年後と1年後の姿を書きます。記入例はこうなります。

    ありたい姿:人の挑戦を、そばで後押しできる人でいたい
    3年後:後輩や新しく入った人が、最初の仕事を任されたときに相談に来てくれる立場にいる
    1年後:自分の担当業務の進め方を手順書にまとめ、新しく入った人が自分で進められるようにしている

  4. 次の一歩を書きます(10分)。「これから」と「これまで」を見比べて、いまの自分との差を書き、次の節目までに試すことを1〜2個、今週やる最初の一歩を1つ決めます。記入例の続きなら、「差:教える経験がほとんどない」「試すこと:新人の相談役を半年やってみる」「最初の一歩:上司に相談役をやってみたいと伝える」のようになります。

時間がないときの15分版

「これから」のありたい姿の1文と、「次の一歩」の最初の一歩だけを書きます。ありたい姿の言葉が浮かばないときは、「これまで」の欄の「いちばん手ごたえがあった場面」を1つ書き、「あの場面のような状態で働けるとしたら、それはどんな状態か」を言葉にしてみてください。

気をつけたいこと

  • 書いたとおりに進むことは、ほとんどありません。土台にあるキャリア・デザインの考え方でも、節目と節目の間は計画どおりにいかないことを前提に、偶然の出会いや予定外の出来事も生かすことが大切だとされています。シートは「この方向に進む」という目安で、守るべき計画ではありません。
  • 会社に提出するシートと、自分のために書くシートは分けて考えたほうが書きやすくなります。評価や異動の面談で使われるシートでは、本音の「これから」を書きにくいことがあります。自分用の1枚を先に書き、そこから提出用に必要な部分を書き写すと、言葉が借り物になりにくくなります。
  • 「これから」を大きく書きすぎると、いまの自分との差ばかりが目について、書いたあとに気持ちが重くなることがあります。差を埋める一歩が今週の行動まで降りてこないときは、3年後・1年後の姿を一段小さく書き直してみてください。
  • このシートは自分の考えを整理するためのもので、適職や向き不向きを判定するものではありません。どの仕事が合うかを外から確かめたいときは、ほかの手法や、キャリアコンサルティングのような第三者との面談を組み合わせる使い方が合います。
  • この記事のシートの項目と手順は、キャリア・デザインの考え方をもとに、ひとりで書けるように組み立てた使い方のひとつです。

やった後の次の一歩

シートを書き終えたら、決めた最初の一歩を試した日に、そのときの手ごたえを1行ずつ書き残してください。「相談役をやりたいと伝えたら、意外とすんなり任された」「教えてみたら、思ったより疲れた」のような記録が、次の節目でシートを書き直すときの「これまで」の欄の材料になります。ありたい姿の言葉をもっと深めたいときは価値観ワークが、仕事の条件を整理したいときはWill-Can-Mustが、手放せない軸を確かめたいときはキャリアアンカーが隣にあります。どの手法を選んでも、結果を日々に活かすのは「書いて、読み返すこと」です。

よくある質問

キャリアデザインシートに決まった書式はありますか?
誰もが使う決まった書式はなく、会社の研修や大学のキャリア支援などで、それぞれ独自のシートが使われています。国が様式を定めているものとしては、厚生労働省の「ジョブ・カード」の中の「キャリア・プランシート」があります。この記事のシートは、これまで・これから・次の一歩の3つに絞った、ひとりで書くための形です。
将来やりたいことが決まっていなくても書けますか?
書けます。「これから」の欄は、なりたい職種ではなく「どんな状態で働いていたいか」から書くと、やりたいことが決まっていなくても埋まります。たとえば「人の挑戦を後押しできる人でいたい」のような言葉で十分です。職種や役職は、決まってから書き足してかまいません。
どのくらいの頻度で書き直せばいいですか?
転職・異動・復職・昇進・進学のような節目のたびに、1枚書き直すのが目安です。節目がない時期でも、年に1回くらい前のシートを読み返すと、ありたい姿がどう変わったかが分かります。

どの手法を選んでも、結果を日々に活かすのは「書いて、読み返すこと」です。