ジョブ・クラフティングのやり方。仕事を「作業・人・意味」の3つから組み直す手順と書き込みシート

ジョブ・クラフティングは、いまの仕事のやり方・人との関わり方・仕事のとらえ方を、自分の強みや大切にしたいことに合わせて少しずつ組み直す考え方です。2001年に経営学の論文で示された由来、ひとりでできる4つの手順とそのまま使える書き込みシート、効果の研究の読み方と組織の中での限界まで解説します。

わかること これから 所要時間 40分〜
向いている場面: 転職復職副業日常
4コマでわかるジョブ・クラフティングのやり方。仕事を「作業・人・意味」の3つから組み直す手順と書き込みシート

ジョブ・クラフティングとは

ジョブ・クラフティングは、いまの仕事を、作業のやり方・人との関わり方・仕事の意味のとらえ方の3つの面から、自分に合う形へ少しずつ組み直す考え方です。アメリカの組織研究者エイミー・レズネスキーとジェーン・ダットンが、2001年に経営学の学術誌『Academy of Management Review』に発表した論文「Crafting a Job: Revisioning Employees as Active Crafters of Their Work」で示しました。仕事は上から与えられて終わりではなく、働く本人が日々つくり変えているものだ、という見方が出発点です。

所要時間と道具

40分〜1時間。紙とペン、またはメモアプリがあれば足ります。下の「やり方ステップ」にある書き込みシートをそのまま写して使えます。

提唱者のレズネスキーとダットンは、同じ研究グループのジャスティン・バーグとともに、ミシガン大学のセンター・フォー・ポジティブ・オーガニゼーションズから、仕事を積み木のように並べ替えて考えるワークブック「Job Crafting™ Exercise」を出しています(有料・英語。オンライン版と冊子版があります)。この記事の手順は、そのワークブックを使わずに、論文が示した3つの組み直しの考え方だけでひとりで進められるように組み立てたものです。

向いている人・場面

  • 仕事そのものは嫌いではないのに、毎日がこなす作業の繰り返しに感じられている人
  • 転職を考えはじめたものの、「仕事が合わないのか、やり方が合わないのか」を分けて考えたい人
  • 休職や育休から仕事に戻る前に、戻ってからの働き方を自分なりに組み直しておきたい人。担当業務の量や関わる人の範囲を、戻る前に書き出しておくと、上司との面談で相談する材料にもなります
  • 副業を始めて、本業との時間や気持ちの配分を見直したい人。本業の中で満たせていないことを書き出すと、副業に何を求めているのかが見えてきます
  • 自分の強みや大切にしたいことは分かってきたけれど、それをいまの仕事でどう使えばいいかが分からない人

強みや大切にしたいことがまだ言葉になっていない場合は、先に価値観ワークやストレングスファインダーで材料を集めておくと、手順2で組み直す方向が決めやすくなります。

やり方ステップ

ジョブ・クラフティングは、いまの仕事を一度ばらして、3つの面から組み直していきます。

組み直す面何を変えるか例
作業仕事の中身・量・進め方資料づくりに、得意な図解を取り入れる
人との関わり誰と、どのくらい、どう関わるか新人の相談に乗る時間を自分から増やす
意味のとらえ方仕事をどう理解し、何のためと考えるか「データ入力」を「チームの判断を速くする仕事」ととらえ直す

書き込みシート(コピーして使えます)

【1. いまの仕事の棚卸し】
・時間を多く使っている作業(3〜5個):
・よく関わる人:
・この仕事は、何のためにあると思っているか:

【2. 自分の手がかり】
・強み(得意なこと・人から頼まれること):
・大切にしたいこと:
・やっていて時間を忘れること:

【3. 組み直し案】
・作業:
・人との関わり:
・意味のとらえ方:

【4. 最初の2週間で試すこと(1つ)】
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4つの手順

  1. いまの仕事を棚卸しします(15分)。1週間を思い出し、時間を多く使っている作業を3〜5個、よく関わる人、そして「この仕事は何のためにあるか」と自分が思っていることを書き出します。「営業」のような大きなくくりではなく、「見積書を作る」「週1回の定例で報告する」のように、場面が浮かぶ単位で書くのがコツです。

  2. 自分の手がかりを書きます(10分)。強み、大切にしたいこと、やっていて時間を忘れることを、それぞれ1〜3個書きます。ここが、組み直す方向を決めるものさしになります。

  3. 3つの面それぞれに、組み直し案を書きます(15分)。手順1の棚卸しを手順2のものさしで見て、「この作業に、自分の強みを持ち込めないか」「この人との関わりを増やせないか、減らせないか」「この仕事を、自分の大切にしたいことにつながる言葉でとらえ直せないか」を考えます。記入例はこうなります。

    大切にしたいこと:人が自分の力で前に進めるようにしたい 作業:問い合わせ対応の回答を、相手が次から自分で解決できる手順書の形で返す 人との関わり:困っている後輩に、週に1回こちらから声をかける 意味のとらえ方:問い合わせ対応を「人が自分で動けるようになる手助け」ととらえ直す

  4. 最初の2週間で試すことを1つだけ選びます(5分)。3つの案のうち、自分の裁量の内側で、明日からできるものを1つ選びます。全部を一度に変えようとすると、周りとの調整が増えて止まりやすくなります。

時間がないときの10分版

「意味のとらえ方」だけを書き直します。いま時間を一番使っている作業を1つ選び、「この作業は、誰の、何の役に立っているか」を書いてみてください。書いた言葉が、自分の大切にしたいことと少しでもつながれば、明日からその作業に向かうときの気持ちが少し変わることがあります。

気をつけたいこと

  • 効果の研究の多くは「関係がある」ことを示したもので、「こうすれば必ずこうなる」ことを示したものではありません。ジョブ・クラフティングをしている人ほど仕事への熱意や満足が高い傾向は、多くの調査をまとめた分析で繰り返し確かめられていますが、熱意がある人ほど工夫をする、という逆向きの関係も含まれます。ワークブックを使ったワークショップの実験では、参加した社員の6週間後の幸福感と仕事ぶりが周りから高く評価されたという報告もありますが、1社での実験です。
  • 組み直せる範囲は、職場や立場によって大きく違います。裁量が小さい仕事では、作業や関わる人を変える余地が少ないことがあります。そのときは「意味のとらえ方」から始めるのが現実的です。
  • 自分に合う作業を増やした結果、ほかの人に負担が回ることがあります。組み直しは自分だけで完結するものではないので、作業や担当を変えるときは、周りへの影響を一度考えてから試してください。
  • 仕事が自分にどうしても合わないときに、「とらえ方を変えれば我慢できるはず」と無理を続けるための道具ではありません。組み直してもつらさが変わらないなら、それは仕事そのものを見直す材料です。
  • この記事の4つの手順と書き込みシートは、論文の考え方をもとに、ひとりで進められるように組み立てた使い方のひとつです。

やった後の次の一歩

試すことを1つ決めたら、2週間、試した日の手ごたえを1行ずつ書き残してください。「後輩に声をかけたら、思っていたより相談が来た」「手順書にしたら、同じ問い合わせが減った」のような記録が、次に何を組み直すかの手がかりになります。組み直しを続けても満たせないことが見えてきたら、仕事の条件を整理するWill-Can-Mustや、自分が手放せない軸を確かめるキャリアアンカーが隣にあります。どの手法を選んでも、結果を日々に活かすのは「書いて、読み返すこと」です。

よくある質問

転職を考えている人には関係ない手法ですか?
関係があります。転職を決める前に、いまの仕事のどこを組み直せば満足が変わるかを書き出しておくと、「仕事そのものが合わない」のか「やり方や関わる人を変えれば合う」のかを分けて考えられます。前者だと分かれば、そのまま転職の軸として使えます。
上司に相談しないと始められませんか?
3つの組み直しのうち「意味のとらえ方」は、誰の許可もいらず、今日からひとりで変えられます。作業の進め方や関わる人を変える場合も、まずは自分の裁量の内側で小さく試し、役割や担当の変更が必要になったときに上司に相談する、という順番で十分です。
ジョブ・クラフティングと「仕事を工夫する」ことは何が違うのですか?
日々の工夫そのものは同じですが、ジョブ・クラフティングでは「作業」「人との関わり」「仕事の意味」の3つに分けて、自分の強みや大切にしたいことに合わせて意図的に組み直します。なんとなくの工夫を、自分に合う方向へそろえるための枠組みと考えると分かりやすいです。

どの手法を選んでも、結果を日々に活かすのは「書いて、読み返すこと」です。